ガイドコラム 修学旅行の案内を数多く手がけてきたベテランガイドだからわかる日光修学旅行の魅力や学生に学んでほしいポイントをご紹介します。

日光殿堂案内協同組合 理事長 春日武之(かすがたけゆき)さん

日光殿堂案内協同組合 理事長

春日武之(かすがたけゆき)さん

江戸時代発祥の堂者引き(どうじゃびき)と呼ばれる、世界遺産「日光の社寺」専門の案内人。豊富な日本史の知識とユーモア溢れるトークが人気を集めています。

日光インタープリター倶楽部 所属 玄梅正明(げんばいまさあき)さん

日光インタープリター倶楽部 所属

玄梅正明(げんばいまさあき)さん

山登りをはじめアウトドアが趣味で、子供のころから戦場ヶ原に親しんだ自然ガイド。子供たちを楽しませるたくさんのアイテムを携えて案内してくれます。

この方々にお聞きしました!

世界遺産「日光の社寺」を楽しく学ぶポイント
実はもっといる猿。教訓ともなるストーリーが隠されている
実はもっといる猿。教訓ともなるストーリーが隠されている

日光東照宮の一番の見どころは?

春日武之さん
春日武之さん

子供たちが関心を持ちやすく、学ぶポイントも多いのは、「見ざる言わざる聞かざる」で知られる「三猿」ですね。
実は3匹だけではなく、もっとたくさんいるんですよ。8面の彫刻に16匹の猿が彫られていて、生まれてから大人になるまでの成長の様子を表しています。
最初は「きれい」「表情がおもしろい」といった見た目の印象しかなくても、そこに描かれているストーリーや由来を学校生活など身近な出来事に置き換えて説明することで、込められた意味を深く考えてくれるようになります。
三猿の本当の意味やストーリーはぜひ、日光に聞きに来てください。

勝道上人の伝説が残る神橋
勝道上人の伝説が残る神橋

子供たちには「難しい」と思われがちな歴史や世界遺産を楽しむために工夫していることは?

春日武之さん
春日武之さん

子供たちは戦国ゲームの影響で、武将の名前をよく知っています。例えば伊達政宗。実は東照宮には伊達政宗が奉納した灯篭があるのですが、有名な人物や身近な出来事との接点を見つけて話をすると楽しんでもらえますね。
他にも、勝道上人というお坊さんが創建したと伝わる輪王寺では、「なぜお坊さんは寺を建てたのか」という質問がでることがあります。その時には、「お坊さんは人の役に立つには勉強や訓練が必要だと考え、そういった教育をする拠点とするためにお寺が必要だったんだよ。現代の学校もそうだよね。」という話をします。身近なことに例えることが、楽しく学べる最大のポイントです。

毎年たくさんの観光客が訪れる日光東照宮
毎年たくさんの観光客が訪れる日光東照宮

修学旅行を通して学んでほしいことは?

春日武之さん
春日武之さん

歴史や史跡といった勉強的なことだけではなくて、集団行動や他人への気配りも学んでほしいと思っています。
日光東照宮には外国人も含めたくさんの一般の旅行者が訪れているので、どんな振る舞いが迷惑をかけないかを考えてもらえるように気を配っています。
それから、参拝のマナーや心構えも大事です。神様はなんでも願いを叶えてくれるのではなく、「見守ってくれる存在」なんだということを子供たちには伝えています。神様にも周りの家族や友達にも感謝することが大切だと、日光の修学旅行を通して学んでくれたら嬉しいです。

戦場ヶ原を楽しく学ぶポイント
青々とした湿原と青空が美しい夏の戦場ヶ原
青々とした湿原と青空が美しい夏の戦場ヶ原

戦場ヶ原の見どころは?

玄梅正明さん
玄梅正明さん

まずは美しい景観を楽しんでもらいたいですね。青々とした湿原の先に見える日光連山や、季節ごとの高山植物など、素直に自然を「きれいだな」と感じてもらえることが嬉しいです。
それから、絶滅危惧種の動植物や、本州ではここでしか見られない植物などがあります。空気がきれいなところでしか育たない「サルオカゼ」は貴重な地衣類で、戦場ヶ原では1年中見ることができます。時には子供たちに触れてもらいながら、その土地・環境でしか生きられない動植物がいることを肌身で感じてもらっています。

シカの角や写真などのアイテムで分かり易く解説
シカの角や写真などのアイテムで分かり易く解説

修学旅行生に楽しんでもらうために工夫していることは?

玄梅正明さん
玄梅正明さん

見せてあげたい動植物がタイミングよく見られないこともありますので、常にバッグの中に、写真などのアイテムを入れています。一番喜んでもらえるのは本物の「シカの角」。なかなか間近で見る機会がないので、実際に触ったりかぶってみたり、楽しんでくれますね。
そもそもなぜシカが見られなくなったかと言えば、繁殖しすぎたことを理由に人間が駆除したから。ではなぜ駆除しなければならなかったのか、人間と動植物の共存や生態系の話なども、実際にその土地で見て聞くことで何が大切かを考える機会になると思っています。

以前には絶滅危惧種に指定されていたホザキシモツケ。自然保護を考える機会にしたい
以前には絶滅危惧種に指定されていたホザキシモツケ。自然保護を考える機会にしたい

修学旅行を通して学んでほしいことは?

玄梅正明さん
玄梅正明さん

やはり「自然の大切さ」です。今見られている植物や動物たちも、いつかいなくなってしまうかもしれない。そうならないためにどうしたら良いかを考えてもらいたいですね。
私はいつも修学旅行生に、「1つでも良いから、ここで学んだことを家族に教えてあげてください」とお願いしています。学校の中だけではなく、家庭でも一緒に考えてもらいたいからです。
実際に話を聞いた生徒の家族がプライベートでもガイドを依頼してくれた時には本当に嬉しかった。修学旅行をきっかけに自然の大切さを学ぶ輪が広がってくれたらと思います。